落とし込み釣行記2011/2月

 釣行日場  所 潮月齢 干満水温天気状態 餌釣果サイズ
2月19日(土)山口16満09:34
干15:49
9.5北東カニ143

瀬戸内での落とし込み

瀬戸内海で思い出すのは、学生の頃に一人旅をして訪れた倉敷の鷲羽山からみた海。

キラキラと鏡をちりばめたように光る青い海に緑の大小の島が浮かんでいた。

そのころの自分は釣りをすることなど考えてはいなかったので、その天国のような海をみても、どんな魚が釣れるのかとか、いい防波堤はないかとかは考えはせず、同じように美しいはずの未来への夢を重ねて見ていたのだった。

そんな明るいイメージの瀬戸内。

 

コンビナート

しかし、落とし込みを始めて行った海は、コンビナートが周りに立ち並び、煙突から出た煙が何とも言えない匂いを漂わせて思わずむせる。

ただ、厳寒の釣れない時期にもときどき嬉しい釣果をもたらしてくれるほどに魚影はすこぶる濃いのでちょくちょく行ってはいた。

いたもののその超近代的なロケーションは学生の頃のイメージからかけ離れて現実的。

非常手段的な船やロープの間の釣り方。釣れずに帰る際の、

「景色だけでも気持ちよかったな。」

という言い訳さえゆるされない釣り場だった。

 

 

しかし、先日、

「いい場所がありますぜダンナ。」

と、耳打ちされたのは、数年前にルフィちゃんと山口に行ったときコンビナートの見える波止から、あそこはどうかなぁと思っていた場所で、目の前は水平線が広がっている。

「しかも、めちゃくちゃ美味い広島風お好み焼き屋まであるんです。」

と、たたみかけられ、

「行く!」

と間髪を入れずに返事をしたのだった。

 

で、AMAとRMC混合4人で目的地に行く。

 

 

夜はすでに明け、小高い山や植え込みや雑草の緑から抜け出て海に突き当たったところで車を降りる。植物と潮の混じったいい匂いの風が吹いている。目の前に広がる海の色も明るく、ちょっとした砂浜もあり、コンビナートは遠くの対岸だから気にならない。

あー気持ちがいい。釣りはこうでなくっちゃ。

浅くて底が見えているが、わずかに斜めに海に入った変則穴ポコ護岸。ここにチヌが住んでいるらしい。

 

せっかくの広い場所。4人なので離れて釣ろうや。と、支度ができた僕から一気に遠くまで歩いて、もういいかなというところで竿を出してみる。

スケスケで斜めの護岸の穴を少しずつ探りながら約3mほどの底までゆっくりと。

 

先週ここにきて経験済みの山さんは、

「ハリス1号とか0.8号とかで今日は試してみます。」

と言っていたけど、僕は1.7号から。鈎は管付きグレ6号、あまり糸にガン玉3G。小さめのカニを付ける。

 

山口と言えばまず餌はフジツボなんだが、最近はスレて底狙いのカニの方がいいらしい。

思いに反して喰わない。チョッと焦り。

 

程なくして山さんから写メール。もう釣ったらしい。自分の落とし方、悪いのかな。しばらくして電話すると、

「今、2枚目釣りました。1枚は44ぐらいあります。底ですよ。」

一気に底狙いのようで、上層の穴から序々に落としていたのは効率が悪かったようだ。

 

で、その釣り方に替えると、しばらくしてアタリ。

モゾモゾとしたもんだから思わずアワせた。

ちょっとさわられて発射してしまった。

さわったそいつは鈎に掛かって一気に沖に走ったがピシッ!はずれちゃった。

早すぎた。しくじった。心づもりもしていなかったから。

 

 

また、しばらくアタリなし。山さん、

「黒いものが動いてる辺りに落とすと喰いました。」

と言っていたが僕は覗いてもいなかったし、ちょっと覗いてみても見えない。

しかし護岸角を曲がると光線の加減で底まで見えるようになった。

確かにたまに黒いものが動いている。

 

で、その辺りに落として少し動く潮に漂わせるのを繰り返していると、糸フケが少し張り、次に穂先が少し曲がった。

アタリか! ちょっと穂先を上げてみる。喰ってる。

が、このままアワせはもうしない。いくら何でもそこまで若くないし。

 

テンションを掛けたままじっと待つ。動け!しばらくじっとしていたが少しテンションに変化を加えてやると横にじわっと動き出し、だんだんと速くなりさらに1mほど穂先で付いていってアワせる。

落とし込み釣果11-2-19

寒チヌ 1枚釣れればOK

 

今度はうまく掛かったか?

確信は全然ないがとにかく竿を伸ばさないようにしながら引き寄せる。タモに入れホッ。

鈎は唇に掛かっている。43cm。1枚獲れればいいのだ。目的完遂。

 

 

その後は、みんなもパッとしないので場所替えする。お好み屋さんの前を通り過ぎていく。まだ、釣っていない二人のために潮が高い時間帯のチャンスを逃さないよう。

 

いつもの船やコンビナートのごちゃごちゃした場所だ。ま、しょうがないか。

3人は港内へ向かって探りだし、山さんは逆に港から出る方へ歩き出す。

人生の分かれ道もこんなふうに何気なく、そして決定的なのだろう。

全然、アタらない。いつまで行っても普段は見える魚も見えない。おかしい。

 

 

1時間程して山さんから電話。

「港から出たところで3枚釣りましたよ。こっち来ンですか。M男さんも車で来るそうだから乗せてもらったらいいですよ。」

「う〜ん。また、人が増えて釣れんようになったらイカンし。ヨカ。」

と、そのまま続ける。行ったM男ちゃんは45UPを釣って安心したみたい。

 

 

その後、2カ所回ったが大潮で潮位はかなり下がり可能性もさらに下がり、見切りをつけて福岡へUターン。

この時期だ。気持ちのいい釣り場で1枚釣れればOK。

 

さて、もう2月も半ば。次はいよいよ春の川内かも。あそこのロケーションは最高だ。



 釣行日場  所 潮月齢 干満水温天気状態 餌釣果サイズ
2月11日(金)長崎8満06:57
干13:06
14北西カニ50.5
35

冬の雨

レインスーツに時折強くうちつけフードからしたたる雨も、それほど気にならない。

北西の風も予報の5〜6mまでは吹いてないようで、つらくはない。

 

前日。天気予報では、せっかくの3連休はかなりの寒波で雪が積もるらしく、唯一1日目の建国記念の日は福岡は雨、長崎方面は曇りとの予報。

ならば長崎に!と久しぶりに一人で行ってみることにしたが、車に乗ってしばらくして降り出した雨は釣り場に着いて車から出てもポツポツと肩を濡らしている。

 

分かっていたら絶対釣りに出るはずがない冷たい冬の雨。

しかし、いざ釣りはじめたら、雨風がひどくなければ、案外受け入れられるものだ。

というか、人はおかれた境遇に否応なく順応しようとする。無の心境だナ。

 

ただ、風が強く吹かなければ澄んでしまうこの釣り場では、アタリも全くない。上層の穴も、底も喰わない。

こりゃきびしいぞ。

 

こんな天気で釣りにきている物好きはさすがにいない。

見渡す限りの埋め立て護岸は寒々としているが、全て貸切ということだけが幸いかな。

 

 

実績のある場所はあきらめて、別な方面を探り歩いてみる。

降ったり止んだりする雨の中を黙々と。とにかくここまで濡れたらもう釣り続けるしかないよな。

 

初めは上層をしばらく…よろしくない。

竿:小継飛竜3.6m穂先改造、ハリス:1.7号、鈎:管付きチヌ8号。これはこのままでいいだろう。

鈎上に打ったBのガン玉に2Gを足して底まで落としてみる。

 

ゆっくり落としてダメのときは若干オモリを重くするのは、チヌに対してばかりでなく自分の滞った気持ちの切り替えもできて、案外、展開が変わるときがある。

餌が底まで着いて喰ってなかったら、リールそばの糸を左手の指でつまんで手を横に伸ばしてたぐる。竿を上げて餌を水面まで上げる。移動してまた上層から落として、糸が張りきる前に左手でたぐった糸を離して底まで。

このパターンができる程度の水深だ。8mぐらいかな。

 

 

釣りはじめてもう2時間半ぐらいだ。アタらんなぁ。

他の釣り場よりここの水温、なぜか2〜3℃も高いのに。

 

 

この辺り、少し潮が動いてるかな。と思っていたら、上層3mほどで糸がふける。

アタリか?

キクと、さ・か・な!

アワせるとチヌらしい引き。

 

左指でたぐっていたままだった糸をピンと離し急いでリールを巻いて再び竿にテンションをかける。この釣り方では魚が掛かったらこうやらないとリールが巻けない。この間に穴ポコにもぐられる危険があるがしょうがない。

 

運よく魚はまだ泳いでいる。

 

しかし、長時間気温5℃の風雨の中で、すでにかじかんだ両手。固まった体。

リールを巻くのもぎこちない状態で魚の大きさも引きの程度もよく感じ取れない。

兎に角、バラさないよう竿の角度に気をつけてリールをギコギコ巻くと、案外抵抗せずに浮いてきた。

オッ、小さくはないゾ、よかった。

 

と、タモを腰から抜くと同時に空気を吸ったチヌはいきなり反転して、今度はギューッと締め込んだ。

やっと釣られたことに気がついたのかネ。それとも、アワせて急に糸を離して緩めたからパニックに陥ってたのかな?

 

目が覚めたそいつは、さっきとはうって変わって強烈な力で手前の穴ぼこに向かってギュ・ギューッ、ズズッと入うとする。

殆ど穴に入っているかのような糸の角度で、いつ切れてもおかしくない状態。

兎に角、切れるなと祈りながら伸ばした両手で竿を支え、スムーズに動かない手首を何とか回転させてリールを巻く。

 

落とし込み釣果11-2-11

貴重な1尾

 

不思議と切れずに穴から離すことができた。ようやく喰ったチヌ、切れていたら最悪の展開だったが、無事フィニッシュ。

 

上げた魚は思いのほか良型で、測ると50.5cm。

突然の年無しだ。

ラッキー。拾いものだ。辛抱にはときどき見返りもあるってことかナ。

 

 

 

 

その後、護岸から出た何の変哲もない小さな波止内で35cmのおまけ。

 

ただ、その後はやっぱり何もなし。あのとき切られてたらと思うと。

今日は運がよかった。

釣果2

 

本当ならば釣りをしているばずもない冬の雨。

天気予報にだまされてここまで濡れにきた。結果よければ雨もよし…か。

 

「釣師と魚は濡れたがる」 (開高健 「フィッシュ・オン」)

 …え?僕はやっぱりイヤだな。